シャボン玉のお散歩

政治経済・芸術・読書案内など日々の徒然を綴ります。

生誕140年 吉田 博展 -山と水の風景-

損保ジャパン日本興亜美術館「吉田 博展」に行ってきました。

故ダイアナ妃が来日した際に、自ら画商を呼び寄せ、吉田 博の木版画を買い求めたと言われています。いまだに世界中で愛されているダイアナ妃効果か、平日にも関わらず、大盛況でした。それでも、さっと人が引けるときがありましたので、ひとつひとつ丁寧に見ることができました。

明治を代表する画家黒田清輝がフランスから帰国し、印象派の影響を受け外光派と呼ばれる作風を確立し白馬会を結成し、一世を風靡するのに対し、吉田博が所属する明治美術会は、わきに追いやられてしまいました。吉田博は、白馬会に負けじと持ち前の反骨精神で仲間の画家とともにアメリカに渡り、展覧会を開き、吉田博だけでも約1000ドル(当時の教師の年収の10年分に相当するらしい)の売り上げをあげ、成功を収めます。

また、晩年、木版画に注力しますが、こちらも欧米では日本の木版画=浮世絵という既成概念を打ち砕くため、新たな挑戦をしたということです。

展示前半は、水彩画と油彩画が並んでいます。

光が繊細で柔らかい水彩の風景画は、ロンドンのテートブリテンにある風景画を見ているようで、イギリス絵画の影響を強く受けたことを感じさせます。現に、ホイッスラーに傾倒していた頃があるということです。

『農村の夜明け』(水彩)、『チューリンガムの黄昏』(油彩)、どちらも家の灯りの色が射し色となって印象的です。

アルプスやヨーロッパの山の風景画、特に油彩は、あるときはホドラー、あるときはセゼンヌ、あるときはゴッホを彷彿させ、力強い輪郭が山の険しさを表現しているようです。また、『雲海に入る日』は、王ヶ頭で見た日の出直後の雲海を思い出させ、その写実力も見事なものです。

展示後半には木版画が並んでいます。

吉田博の木版画は 浮世絵のような大胆な構図とは異なり、自然や旅先で出会った人々の営みを写実的に表現しています。

『帆船』シリーズ《朝》、《夜》、《午前》、《午後》、《夕》、《霧》は、モネのルーアン大聖堂や睡蓮等のように時間の経過とともに変化する光の具合をよく捉えています。

また、展示最後の方に、戦中時に描いた『急降下爆撃』、『空中爆撃』は降下する様が大胆に表現されていて、絵を見ている側も、引き込まれ地に落ちていきそうで、他の絵にはない怖さを感じます。

国策とはいえ、従軍画家としてなにかしら戦気高揚のために描かなければならない事情を察すると、反骨精神の大きい吉田博にとって、つらいものではなかったのかと想像します。

日展最後の主品作『初秋』の穏やかな風景画が、平和となった日本の情景を醸し出し、ほっとします。

全体を通して、吉田博の絵には、画家が山を愛し、旅を愛し、自然を愛しと、それらの愛に溢れています。

欧米では評価が高い「吉田博」ですが、日本でももっと評価されるべき画家のひとりであり、今後も展覧会が開かれることを期待します。

f:id:biobio33:20170805145419j:plain

f:id:biobio33:20170805145444j:plain