シャボン玉のお散歩

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「聖なる芸術とモデルニテ」-古典の現代における展開-

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『開館15周年特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ』

パナソニック汐留ミュージアムのプレス内覧会に行ってきました。

 

ギャラリートークは、監修者の後藤新治・西南学院大学教授と、萩原敦子学芸員

そして、パリからルオーの孫でありジョルジュ・ルオー財団の理事長でもあるジャン=イヴ・ルオー氏の姿も。

今回のテーマは、「聖なる芸術(アール・サクレ)」と「モデルニテ(現代性)」。

「古典」と「移ろい易いもの」--いわば「不易流行」--という視点で、中世以来の聖なる芸術が、20世紀にいかに表現されたのかを考えるものです。

ルオー芸術の古典性と現代性を「イコン(聖なる図像)」「サバルタン(抑圧され抵抗する言葉を持たない者たち)」「マチエール」「ユートピア」という視点で読み解く試みとなっています。

こちらのミュージアムは、日本有数のルオー作品のコレクションを有しています。これに加えて、ルオーの故国フランスのルオー財団の収蔵作品、そしてヴァチカン収蔵作品も今回は間近に観覧することができます。

ルオーの作品は、そのマチエールが何よりも魅力。それをまじまじと観察できるとは。海外の美術館のような至福の時間です。

今回の展示作品の中には、額縁に保護ガラスが入っていないものがいくつもあるのです。ルオー作品のリアルを心ゆくまで鑑賞することができます。

(余談ですが、改装前のオルセー美術館でモネのルーアン大聖堂の極至近距離でそのマチエールを観察してカメラに収めたのはいい思い出です。現在はオルセーも撮影禁止になってますから…)

美術の鑑賞は、「雰囲気を感じる」「全体を見る」「細部を観る」ことが大事です。細部を観るためには、素材や材料の物理的・化学的知識や題材に関する知識、描かれた時代背景や作家の個人史と言った歴史的知識などが必要となってくるでしょうが、まずは、やはり「よく観る」ということに尽きるのでしょうね。

ルオーのマチエールは、ただ絵の具を重ね塗りして盛り上げて出来上がり、といった単純なものではないのです。

描いては、スクレイパーで削り落とし、また描くということを繰り返し続けて出来上がっているというのです。その直向きな巡礼者のような制作の精華としてこれらの作品群があるのでしょう。

今回の展覧会では、ルオーという芸術家の息吹や熱情と言ったものが感じられるものです。

再度足を運びたいと思います。

 

panasonic.co.jp