シャボン玉のお散歩

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表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち

パナソニック汐留ミュージアム『表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち』を見に行きました。

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過去に気になる展覧会もあったのですが、夜間営業がないことと、新橋という場所柄、なかなか足が向きませんでしたが、はじめて訪問しました。

新橋の駅から地下を通れば、雨に濡れることがないので、その点便利かもと思いつつ、汐留ミュージアムへ。

展覧会の内容は、ルオーの作品を中心にカンディンスキーカンディンスキーと親交のあったパウル・クレーやドイツの画家たちの作品が展示されていました。  

小さなミュージアムなので、入ってすぐにチラシ掲載のカンディンスキー《商人たちの到着》が目に入ってきました。カンディンスキーといえば、幾何学的な造形をモチーフに色彩で魅了する抽象画を想像するのですが、はじめのころはこんな絵を描いていたのねーと新しい発見。そして、初期の作品《水門》、大胆なタッチで、パレットナイフで絵具を直接のせるように描いています。展示会場で見ると暗い感じなのですが、会場入り口前にある展覧会紹介のモニターだと色鮮やかで、先にモニターを見てから会場に入ればよかったかもと、反省してしまいました。

中盤と後半には、《E.R.キャンベルのための壁画No.4 習作》《活気のある安定》など、カンディンスキーらしい作品がありました。

展覧会の表題は、『表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち』となっていますが、カンディンスキーに比べて、圧倒的にルオーの作品が多く、最後にROUAULT GALLARY なる小さな区画もあって、こんなに多くルオーの作品を目にするのは初めてでした。

ルオーの作品は、孤独と悲哀が滲み出て、とっつきにくく、少し苦手でしたが、今回、多くのルオーの作品に触れて、印象が少し変わりました。確かに、孤独と悲哀があるのですが、聖書や聖なるものを題材にした作品《聖顔》《キリスト》などからは、キリストの悲哀よりも慈悲の心、慈愛に満ちた心が伝わってきます。

また、《聖ジャンヌ・ダルク 古い町外れ》《降誕》などでは、絵の具を幾重にも塗り重ね、そして削り、まるで木彫りのようで、額まで作品の一部となっていることに驚かされました。塗り重ねられたルオーのマチエールによって、作品からは、強い生命力が感じられます。

そして、ルオーというと必ず脳裏によぎるのは、師匠であるギュスターヴ・モローです。ギュスターヴ・モローは、ルオーやマティスをはじめ教え子たちに、自身の技法を押し付けるのではなく、彼らの個性を尊び、認めるという大きな器をもった師であることを、以前、エッセイで読んだ記憶があります。ルオーの画風も、マティスの画風も、モローあってこそと、いつも思ってしまいます。

やはり現代美術はわかりにくいせいか、展覧会の趣旨は、いまいちよくわからなかったのですが、小規模の美術館にしては、結構、楽しめるものでした。

会期12月20日まで

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