目黒区美術館開館30周年記念 日本パステル畫事始め展
目黒区美術館『目黒区美術館開館30周年記念 日本パステル畫事始め展ー武内鶴之助と矢崎千代二、二人の先駆者を中心に』を見に行きました。
日本におけるパステル画の先駆者である矢崎千代氏と武内鶴之助、国産パステルの誕生へ、そして二人のパステル画家以外の日本と海外の作品が紹介されている展覧会です。
1階では、写真が撮れるコーナーがありました。メインの展示は、2階からでした。
矢崎千代二は、1916年中国を旅して写生するうえで、パステルを使えば出会った風景をその場で絵にすることができると感じ、パステル画に傾倒し、日本にパステル画を普及することを試みます。当時はフランス製のパステルが主流で、国産のものはありませんでした。やがて、日本の風景を描くならば、やはり、その色を出すために、国産のパステルが必要と考え、製造にも関わっていきます。
《インドダージリン》、《ヒマラヤの朝》~《ヒマラヤの朝焼け》では、パステルならではの速写によって、時々刻々と変わる日の光に照らされた山々の風景が色鮮やかに美しく描き出され、息を呑みます。
一方、武内鶴之助は、英国留学中にパステル画と出会い、パステルの特性である速写性と発色性を活かして、油彩を思わせるようなパステル画の作品も多く残しています。
英国留学中に描いた多くの《雲》の作品は、英国の低い空を覆う雲をパステルの速写性を活かし、細い点と線で色を重ね合わせ、その移ろいゆく色彩の微妙な変化を描いて、しばし、英国を旅した思い出に浸ってしまいました。
2階の展示会場の中央に国産パステル誕生のコーナーがあり、パステルの制作工程の紹介もなされていました。
パステル、クレヨン、クレパス、どれも同種の素材なのかと思いましたが、
・クレパスは顔料を加工した油脂で練って棒状にしたもの、
・パステルは粉っぽいクレヨンの一種で微粉の顔料と粘る気の少ない微量の水溶性接着剤を練り固め棒状にしたものである、
ことを初めて知りました。
図録にも、詳しく国産パステルの誕生について解説されていて、読み物としてもよくできています。
今まで、ドガやルドンのパステル画も見てきているのに、今回多くのパステル画を見ていると、今までにない感動を覚えます。
いろいろなパステルの色が組み合わされ、こんなにも繊細な色合いが表現できるのかということに気づかされ、驚かされ、新たな発見があります。パステルは、日本ではあまり使われていない画材ですが、これほど豊かな表現ができるものだとは。その可能性にわくわくさせられる展覧会でした。
帰りみち、偶然、子供が描いたクレパス(クレヨンかも?)の絵が展示されていた場所を通り過ぎました。「(クレパス)こんな使い方しか知らなかったなー」と子供時代の図画の時間が思い返されました。画材に適した画法・技法を教えられていたら、もっと違った絵が描けたのではないのか思いました。
子供の美術教育において、豊かな発想を育むためにも、画材や技法についての学習も体系的に取り入れていってもらえればと思います。
会期 2017年11月26日(日)まで