神奈川県立近代美術館 葉山館『白寿記念 堀文子展』
十数年ぶりに京浜急行に乗って、逗子を訪れた ぐるぐるです。
JR逗子駅から海岸沿いをバスに揺られて、途中に海や葉山マリーナ、日影茶屋を過ぎて、20分ほどでバス停「三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前」に到着。ほとんどの人がここで降りました。
お目当ては、神奈川県立近代美術館 葉山館『白寿記念 堀文子展』です。
美術館に入る前に、混雑を回避するため、外観を見つつ周辺をお散歩。至る所に、「トンビに注意!!」の看板が・・・。そういえば、以前、江の島でハンバーガーを食べているとトンビに襲撃されるというニュースをテレビで見たことがあったなー、と思い出しました。鳥にしてみれば、江の島と葉山なんて目と鼻の先でしょうから、葉山で出現してもおかしくないですね(笑) 見上げると、確かによく飛んでいます。
この日は、曇りがちでしたが、海は穏やかで、都心と異なって空気がきれい。ぽかぽか陽気だったら、もっとお散歩を楽しめるところでした。
さて、『白寿記念 堀文子展』へ。
どの絵からも、画家の命への優しいまなざしと、自由で知的な発想・感覚を感じ取ることができます。
きっと、素敵でおしゃれなマダムに違いないと思い、展示会場終盤の動画のなかで語っている堀文子さんを見て、思ったとおりのマダムでちょっとうれしくなりました。
展示内容は、「Ⅰ はじまり」→「Ⅱ 絵本の世界」→「Ⅲ さすらい」→「Ⅳ うつろい」→「Ⅴ 命といふもの」→「Ⅵ アトリエ」と展開していきます。
「Ⅰ はじまり」には、アンリ・ルソーを研究していたことがわかる《アロエの森》をはじめ、キュビズムの要素もある《山の思い出》、《海辺》など色彩豊かな作品に驚かされます。
堀文子さんは、「子供のころから芸術性に高いものに触れるべき」という考えから、1940年代後半から1970年代に絵本の世界に関わり、《くるみわりにんぎょう》で、ボローニャで開催された第9回国際絵本原画展でグラフィック賞を獲得しています。
《壺井栄作品集》は、子供のころ手にした本で見た記憶があります。
「Ⅱ 絵本の世界」に展示されている作品からは、いわさきちひろや藤城清治の世界観とつながるものを感じさせます。
1960年にご主人を亡くされてから、世界中を2年半もの間、旅で巡り、カルチャーショックを受け、一時期、制作活動を中断します。再開後の作品が「Ⅲ さすらい」以降に並びます。あるがままの自然の姿が、色彩豊かに、そして、幸せな空気を運んできてくれます。
堀文子さんの言葉が、所々に紹介されていました。この風景はどんな目線で描かれているのであろうかと気になりながら足を進めていたのですが、「Ⅳ うつろい」の終わりに「心のささやきとか心象風景とかいう表現はきらいです。心を捨てて、野狐のように物を見たい。」という、言葉が紹介されていて、なるほどと納得がいきました。
絵だけではなく、堀文子さんの言葉にも目を向けて欲しいなーと思います。
さて、駅からバスに乗るときから、「日本は高齢者社会、おばあちゃん天国と言われているらしいけど、どうして、この展覧会に高齢のご婦人がこんなに多くいらしているのか?」と気になっていましたが、その答えと思しきものを得ました。
展示会場を出ると、おしゃべりする高齢のご婦人方。彼女たちの話に耳を傾けると、堀文子さんは黒柳徹子さんと親交があるようで、《アフガンの王女》は、徹子さんをモデルにしていて、「徹子の部屋」のセットに飾られているとか云々。
ははあーん!黒柳徹子さんのファンたちも大勢きているのね!と、納得。徹子さん効果、恐るべしですね!
( ↓ 画像はチラシのスクリーンショットです。確かに、徹子さんを彷彿とさせます。)
《女王ー頂点に立つ者ーの孤独》も徹子さんをモデルとしているのはないかと個人的に思います。「個人像/特別出品」でチラシには載っていますが、図録には載っていないので、この展覧会でしか見られないかもしれません。
素敵で感動的な展覧会でしたが、絵の額縁に嵌め込まれているガラスに観覧者の姿が写り込んでしまい見難いことと、展覧会場の動線がわかりづらいのがちょっと残念でした。
会期2018年3月25日まで
折角、ここまで来たので、近くの山口蓬春記念館 へも行くことにしました。