シャボン玉のお散歩

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サントリー美術館『六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信』展

サントリー美術館『六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信』展に行ってきました。

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狩野元信は、狩野派の初代・狩野正信の子、狩野派の2代目です。永徳の祖父にあたる人物です。

江戸時代には、幕府御用絵師として、日本全国に影響を及ぼすに至った狩野派。徹底した粉本主義から独創性、創造性を失うに至ったと言われる狩野派

かなり長い間そのような否定的に論じられてきましたが、そのような面ばかりではないというのが今の流れでしょう。

日本絵画史に大きな影響を及ぼしたのが狩野派であるというのは、確かな事実です。その狩野派発展の基礎を作ったのが、狩野元信です。

元信の画力は、卓越したものがあります。筆致、画面構成、彩色、どれをとっても素晴らしいものです。狩野派のその後の発展が彼の中に秘められているように思えます。

  画を学ぶこと遠く父に過ぎたり。

  遂に一家を作す。

  世に古法眼と称し、狩野氏の宗とする所なり。「本朝画伝」

また、父の正信は、宋元画の筆法に基づく水墨画を能くし足利家の御用を承っていたわけですが、元信はそんな漢画だけではなく、土佐派に代表される大和絵の手法も取り入れていきます。

  狩野家は是れ漢にして倭を兼る者なり。「本朝画伝」

 狩野派といえば、花鳥画という趣がありますが、重要文化財《四季花鳥図(旧大仙院方丈障壁画)》を見ていると、その発展の種が見て取れます。現在は軸表装となっていますが、元来は方丈に襖絵としてありました。襖絵の状態で配置されていた時は、その画面構成も一層際立っていたことでしょう。

 展覧会では、室町絵画に大きな影響を与えた唐物と呼ばれる中国絵画の名品も見ごたえがあります。

元信筆の作品だけではなく、元信の流れをくんだ絵師や工房の作品も展示されており、元信流の発展の様子もうかがえます。

 元信は、その画力で多彩な画題や注文に貪欲に応えていったようです。これが狩野派の発展につながっていったのでしょう。

鮮やかな仏画多数も描いていたことは寡聞にして知りませんでした。白衣と墨による衣文表現の対比が美しい《白衣観音像》はボストン美術館からの里帰り展示です。

パトロンである大名や寺院の仕事(肖像、頂相、など)も展示されています。

重要文化財《細川澄元像》は、室町後期武将肖像の名品と言えるでしょう。人物表現ももちろん、甲冑や馬の表現も見事です。

 元信に圧倒的な画力があったのはもちろんでしょうが、彼には工房の経営者としての能力もあったことが、狩野派の発展の礎となったのでしょう。

なかなか強かな食えないおっさんだな、と思いました。

   ーー狩野氏終に元信を得るに至りて、天下画工の長となる。「本朝画伝」

図録は、背表紙を挟んで《四季花鳥図》で包まれています。

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会期11月5日まで

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