シャボン玉のお散歩

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絵巻の入門書「すぐわかる 絵巻の見かた【改訂版】」

先日、知人に「絵巻について、何の知識もないから、入門書みたいのはないのかなー?」と言われ、『すぐわかる絵巻の見かた【改訂版】(榊原 悟 監修 東京美術)』を紹介しました。

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『すぐわかる絵巻の見かた』は日本美術の絵画表現の一形態である「絵巻」についてのよくまとまった概説書です。現存する4大絵巻「源氏物語絵巻」・「信貴山縁起」・「伴大納言絵巻」・「鳥獣戯画」をはじめ30数点の絵巻について、写真・イラストに基づき、ストーリー、時代背景、描写などがコンパクトに解説されています。タイトルどおり「見かた」に重点を置いた書物なので、絵巻の構造や画材(絵具についてはコラムあり)といったことは詳しくありません。

 

絵巻の表現形式や鑑賞方法を無視して、絵巻の鑑賞は成り立たないし、表現形式や鑑賞方法、ストーリーが予め知識としてあれば、より一層、絵巻を楽しむことができると思います。

『すぐわかる絵巻の見かた』はごく初歩の入門書なので、この本を通してそれぞれの絵巻に興味がわき、もっと深く知りたい方は、他の資料にも手を伸ばすことをお勧めします。図書館などには、絵巻の全集のようなものも収蔵されているので、そちらを利用するのもよいかもしれません。

また、絵巻は、絵画作品自体としても楽しめますが、中世の人々の生活が生き生きと描かれていることから歴史史料としても価値があります。

ゆっくりと、つぶさに絵巻を観察していくと、「中世の人々は、現代の私たちと異なった世界観をもってきっと生きていたんだろうなー」と、様々な疑問や不思議が湧き上がってくると思います。

「新版 絵巻物による 日本常民生活絵引」は、中世の人々の生活について、様々な事象・項目を字引のように「絵」で引いて調べることができるものです。

文書からだけでは窺い知れない情報が絵画情報には詰まっています。絵巻に描かれた世界を知る上でも貴重な書籍だと思います。このような書物を編纂しようとされた方々の先見の明と努力に感服します。

 

 

ところで、『すぐわかる絵巻の見かた』執筆者の一人である内田啓一氏は、早稲田大学教授だった方ですが、今年お亡くなりになりました。早稲田大学学芸員夏季講座でお世話になりました。ご冥福をお祈りします。

訃報:文学学術院 内田 啓一 教授 – 早稲田大学 文学部


早稲田大学 文学部 学芸員資格課程 夏季集中講座」は、2018年度で終了する予定です。

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